皆さんご存知のように、この1年の間に移民法、米国ビザ取得の状況、ビザを所持して入国する際のシステムなど、多くの変更がありました。そうした中、グリーンカードをアプライしている、これから米国へ転籍、移住しようという方もいらっしゃると思います。
NTT ドコモUSAラボに会場をご提供いただき、San Joseにて移民法についてのセミナーを開催しました。当日は40名以上の方にお集まりいただきました。


* H1B取得はどれくらい大変か?どんなプロセスになっているか?
* グリーンカードのアプリケーションプロセスはどうなっているか?
* それ以外のビザの種類など、米国で働く方法について(投資家ビザなど)
* 転職時、どんな注意が必要か。(特にH1B、グリーンカードアプライ中など)
今回はこうしたトピックについて、移民法を専門に弁護士としてご活躍中のJim Mayock氏をお招きしてセミナーを行いました。スピーカーのbioはこのページの最後をご覧ください。
<<本レポートは当日のセミナー内容を元に書かれていますが、法的に正しいかどうかの専門家のチェックは受けておらず、あくまで参考のためのものです。移民法についての知識が必要な場合、必ず専門の弁護士に確認してください。>>
このレポートは、
1: ビザ・グリーンカードの基礎知識
2: Q & A 
より構成されています。
当日配布されたハンドアウト
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1. ビザ・グリーンカードの基礎知識
外国人がアメリカで働くためにはビザかグリーンカードが必要です。その種類と取得するプロセスについて。
1)ビザの種類
H 全国で約100万人が所持
E 相互条約を結んだ国からの入国者向け投資家ビザ
L 社内転勤による入国者向け
O 非常に優れたスキルを持った人向け
2)グリーンカード
Labor Certificateが必要なものとそうでないものがあり、Labor Certificateが必要なものが、最も一般的なプロセス。
Labor Cert型
Hビザからグリーンカードに移行する場合は、Labor Certificate型が最も普通。
まずLabor Certificateを取得し、次にAOS(adjustment of status)という2つのプロセスを経るが、このプロセスを完了するのにLabor certとAOS最短4年、「少なくとも5-6年かかる」という弁護士もいる。
Labor certificate取得には通常2年かかる。Labor Cert発行の管轄は州政府と連邦政府の両方。取得後、次のプロセスがAOSで、これが 通常2年。AOSの管轄は移民局。ただし、AOSを開始して6ヶ月たてば、仕事を変えることもできる。
以下はLabor certificate不要でグリーンカードを申請できるケース。その資格は以下の通り。
EB5:: $1million以上の投資が必要
EB1-3: Eビザから進める道。
EB1-1: Extraordinary  Oからのパス。
National Interest Waiver: 国家的メリットが必要 (癌の研究など、国家的に意味がある目的を遂行する外国人が対象)
その他の情報:
●1999-2001のHビザの60%がインド人エンジニアだった。権利を強く主張する彼らが議会に働きかけたおかげでHビザ所持者でも仕事を変えられるH portabilityが生まれ、新規にHビザを申請しなくても転職できるようになった。
●同時期に異なるカテゴリでビザを複数所有することはできない。ただし、同じビザカテゴリであれば、働く会社ごとに別のビザを取得して複数の会社で働くことは可能。(H1でHP, H1でDocomoと複数の会社から収入が得られる)
●仕事を失った瞬間にout of status(不法滞在)になる。新たなビザ取得時には、前職の最後の給与支払い証明と、新たな仕事の最初の給与証明で、out of status期間があったか確認するが、長期のブランクは問題となる。しかし実際には、こうした人の扱いにあいまいなケースが存在する。
●ビザの東京での再発行は2週間から1ヶ月かかる。従来、パスポートを郵送すると4ヶ月でビザの再発行を行い、郵便で返送する仕組みがあったが、2004年7月16日をもって終了。今後は必ず出頭が必要となる。
●現在フリーパスとなっている出国管理は今年の12月31日で終了。以後は出国管理も始まる予定。
●bio metrics(ビザ取得時に面接、デジタル写真と指紋押捺、入国時に指紋押捺、出国時は現時点で不明)が導入されることが決定している。
2. Q & A
Q: Backlog reductionのため、今後ビザ・グリーンカード取得手続きが迅速化すると聞いたが?
A: Backlog reductionは政府の全ての領域で課題となっており、その中で移民関連は優先順位が低いので、あまり効果はないと思われる。
Q: ビザ・グリーンカードの取得に現状どれくらい時間がかかっているか調べられるか?
A: 調べるウェブサイトが存在する。しかし、発表される統計的処理時間発表はあまり信頼の置ける数字ではない。
また、移民局のNational Customer Serviceのホットラインというのもあるが、ウェブサイトから得られる情報と同じ返答が返されるだけである。
Q: アメリカ市民となった場合、親・配偶者等の呼び寄せは可能か?
A: 市民による兄弟呼び寄せは、インド人だと20年、フィリピン人だと50年かかっている。まず無理。
一親等の親族であれば呼び寄せ可能。
Q: グリーンカードホルダーによる、親族呼び寄せは?
A: グリーンカードを取得した時点で既に配偶者が居れば、配偶者にも自動的にグリーンカードがおりる。
グリーンカード取得時点で相手が婚約者の場合は、相手のグリーンカード取得には6年はかかる。グリーンカードが取得できそうで、非アメリカ人と結婚しようと思っている場合、グリーンカード取得より一日でも早く結婚すること。
21歳未満の子供もグリーンカード資格ができる。
Q: L、E、J1ビザホルダーの配偶者は働くことが出来るか?
A: 配偶者も働ける。(Hはだめ)
Q: グリーンカード申請中にどのくらいの期間、海外に滞在できるか?
A: 法的には1年だが、入国審査官の知識は徹底しておらず、3ヶ月で再入国を拒否されることもある。注意が必要。
Q: グリーンカードを持っていたらどのくらいの期間、海外に滞在できるか?
A: 1年以上続けて海外に居るのは不可。1年以下でもあまり頻繁に海外に居る場合、運が悪いケースだと取り上げられこともある。
また、近い将来グリーンカードを出国時に読み取るキオスクができる。これが最初に導入される出国管理システム。しかし、180日未満の海外滞在は出国していないとみなされるので、180日に1回アメリカに戻るようにすれば問題なしと思われる。
Q: H portabilityを利用するには、転職先の給料が同じレベルでなければならないという噂があるが、本当か?
A: 真実ではない。仕事ごとに最低限の給料がある。それを下回らなければOK。
Q: 自分で会社を作って、自分がその社員となる場合のビザ申請について教えて欲しい。
A: 自分で自分を雇ってビザを申請するというのは疑われやすい仕組みではあるが、誰が会社のオーナーかを申告する必要はない。自分の会社だと言わなければわからない。(疑われないよう、自分の名前を会社名につけたりしないほうがよいが。)
ただし、無給で働くのではだめ。Hカテゴリーの場合、隔週できちんと給料を払わなければならない。
1人で運営する会社でこれを行うのは難しいので、複数の社員を雇っていた方がよい。しかし将来の発展が約束されていることを示すビジネスプランがあれば何とかなるだろう。
審査のポイントは、現実に存在する「会社」であることが確認されるか否か。カリフォルニア州のサービスセンターでは毎日100,000通の申請があり、不法移民も多い。そういう人たちとは違うことを証明しなければならない。
Q: グリーンカードは別カテゴリーで重複申請可能か?
A: 可能。取れそうな複数のカテゴリで申請のプロセスをはじめ、一番先に準備が整ったもので申請を完了すればよい。
Q: 既に自分でE-visa, 会社を持っている場合はどんなオプションがあるか?
A: Labor cert はできないのでグリーンカードのオプションは減る。ただしHと違って、Eビザは終身保有できるため、ずっとビザホルダーでいればよい。また、自分がE会社のオーナーでなければグリーンカード取得は可能。
Q: 留学後は1年間Optional Practical Trainingのステータスで仕事ができるが、その後Hに応募するには10月の開始期限を待たなければならない。ビザが切れている期間について教えて欲しい。
A: 政府のfiscal year は10月から始まり、既に昨年のHビザ発行は人数制限で締め切り、次のアプリケーションは10月にしか始まらない。Optional Practical Trainingが8月に切れたら、Hビザが取得できるまでは仕事はできない。ただしこの場合、H1-bのFilingを8月中に済ませれば(つまりOPTがexpireするまでに)アメリカ国内に滞在していることは合法。
Q: ビザの間違いを訂正できるか?
A: できない。ただし、一旦国外に出て、正しいビザで再入国すれば前のレコードは消える。
Q: Labor Cert中は転職できるか?
A: できない。
さらに質問がある方は、Mr. Mayockにコンタクトすることが可能です。下記のスピーカーバイオ中にあるウェブサイトをご参照の上、お問合せください。
<<本レポートは当日のセミナー内容を元に書かれていますが、法的に正しいかどうかの専門家のチェックは受けておらず、あくまで参考のためのものです。移民法についての知識が必要な場合、必ず専門の弁護士に確認してください。>>
参考:
昨年の移民法セミナーのレポート
https://www.jtpa.org/event_report/000073.html
セミナー告知より:
セミナーの概要Update on US Immigration & VIsa Issues
H-1B Temporary Professionals
“Portability” to New H-1B Employer before new H petition approved
Loss of Employment
Mergers & Acquisitions
65,000 annual cap
6-year personal cap and 1-yr extensions
Green Cards – Permanent Residence, especially Labor Certifications
How long is it taking to get a Labor Cert?
What happened to Reduction in Recruitment [RIR]? PERM?
Is CIS still processing Green Card applications? How long does it take?
Is there any way to avoid a Labor Certification?
Portability to New Employer after 180 days
Visa Issues at Consulates Abroad – Japan / Mexico & Canada / Other
Appointment systems for personal interviews
Security Checks – Technology Alert List
Impact of Overstay [222g]; Unlawful Presence [3 and 10-year bars]
● Speaker Bio
Jim Mayock
http://www.emvisa.com/mayock.htm
James Mayock is a partner with the immigration law firm of Elliot & Mayock LLP, which has offices in San Francisco and Washington, DC. The firm practices the full range of immigration law and specializes in employment-based immigrant and non-immigrant visas.
James Mayock leads one of the few law firms that offers significant expertise with the entire gamut of immigration opportunities and challenges. From rapid processing of E, H and L business visas, to finding shortcuts to the onerous Labor Certification process, Elliot & Mayock makes the hiring of international personnel a competitive advantage. The firm also specializes in facilitating business visa issuance abroad, having resolved problem cases at US consular posts throughout Europe, Asia and Latin America.
Mr. Mayock is best known for his successful representation of individuals seeking visas under the extraordinary ability and multinational manager categories, having represented a wide variety of international executives, entertainers, artists and athletes. Mr. Mayock secured visas for Boris Yeltsin and Mikhail Gorbachev as O-1 “outstanding individuals”.
A member of the State Bar of California since 1978, Mr. Mayock is certified by the Bar as a specialist in immigration law. He is a past chair of the Immigration Committee of the Bar Association of San Francisco. Mr. Mayock has served in a number of capacities at both the local and national level with the American Immigration Lawyers Association (AILA), including lobbyist, litigation coordinator and media liaison for the local chapter. Mr. Mayock is a member of SHRM (Society for Human Resource Management), NCHRA (Northern California Human Resource Association), ASHHRA (American Society for Healthcare Resources Administration) and the National Association of Healthcare Recruiters (NAHCR).
James Mayock is a frequent and dynamic speaker. He has been successful in clarifying the intricate details of US immigration law and outlining visa strategies for audiences around the world. Recent speaking engagements have included the California Association of Private Postsecondary Schools (CAPPS), the Northern California Human Resources Association (NCHRA), the Bay Area chapters of the National Association of Healthcare Recruiters (NAHCR) and the Indonesian Professionals Association (IPA), the Bar Association of San Francisco (BASF), and the San Francisco chapters of the Swedish-American, Australian-American, German-American and British-American Chambers of Commerce.
Mr. Mayock studied the Russian language at Phillips Andover Academy from 1968 to 1972. In 1975, he was awarded a B.A. in Philosophy by the University of Toronto. He obtained a J.D. from Indiana University in 1978. He studied and worked in international business for three years in South America and is fluent in Spanish.
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