移民法に詳しい弁護士の方を招いてセミナーを行いました。


What You Must Know About Recent Changes and Trends in Immigration Law and Regulations
講師: Marshall Suzuki Law Group
     弁護士・武田昌則
     移民法チームリーダー・金澤達郎
日時: 2003年3月27日(木)
     18:00−会場&ネットワーキング
     19:00 −セミナー開始(〜21:00)
場所: Wilson Sonsini Goodrich & Rosati, 950 Page Mill Road, CA 94304

市民権・永住権(グリーンカード)をお持ちでない方、現在ビザのトラブルを抱えておられる方を対象に、移民法(Immigration Law)上の様々な問題点について、9・11以来のビザ・グリーンカード発行に関する法律・制度・運用の変化も含め、この分野を専門とする弁護士とスペシャリストに講演いただき、さらに皆さんから事前にいただいた質問や会場からの質問にもお答えいただきました。

当日のプレゼンテーション概要
■H-1bビザの概要と最近の状況

  • H-1bビザの概要
  • H-1bビザは、専門職ビザとも呼ばれます。H-1bビザ申請における専門職の定義は、米国で、その職業に就くために、学士号または、それ以上の学位を要求され、その職業の内容が高度に専門化されている職業ということです。ファッションモデルもH-1bビザに該当しますが、要件は、上記と違ってきます。
    H-1bビザの職業としての典型は、技術者、理学療法士、大学教授、教師、会計士、財務分析士、市場調査分析士、経営コンサルタント、弁護士、医者、科学者、研究者、デザイナーですが、この他にもさまざまな職業がH-1bビザとして認められるようになってきています。もちろん、実際申請する場合は、会社、個人条件を細かく見ていく必要があります。
    アメリカの大学または、大学院を修了し、H-1bビザを取得する方が多いですが、日本または、外国の学士以上の資格を利用し、H-1bビザを取得するかたも相当数います。外国の卒業資格を利用する場合は、米国の資格と同等であることをまず評価してもらい、その証明をH-1bビザの申請書に添付する必要があります。最大で、6年の滞在資格が得られ、その間に永住権を申請していくことも可能です。

  • H-1bビザ最近の状況
  • H-1bビザは、年度ごとに発行数の制限があります。2001、2002、2003の年度は、毎年度195,000の新規のH-1bビザが発行されています。しかし、2004年度の最初の日である2003年の10月1日からは、従来の発行予定数である、65,000に戻ります。
    幸い2001年度から現在までは、H-1bビザの枠が広かったため全部の新規の申請が枠内に収まっています。2000年度以前は、65000という枠に入れず、条件がそろっているにもかかわらず、申請がその年度内で受け付けられないというケースも相当数ありました。
    2003年10月からの新年度は、景気にも影響されますが、年度途中で枠がいっぱいになり、次の年度の申請を待つという状況が訪れるかもしれません。そうなりますと、ビザ申請する個人および企業は、非常な不便を招くことになりそうです。米国の議会が動き、2004年度の発行数を広げるのが望まれますが、急激な景気の上昇がない限り、今のところ65000の発行数で定まりそうです。なお、学生が、卒業後の1年間のプラクテイカルトレーニングを受ける場合で、その期間が、10月1日をまたいでいるときは、臨機応変に対応できる可能性があります。
    H-1bビザは、アメリカの企業にとっては、必要で、重要なビザのひとつです。最近のハイテク、コンピュター産業を中心にした好景気は、H-1bビザによって支えられたといっても過言ではないでしょう。米国人の労働市場をH-1bビザが制限しているといった声も聞かれますが、実際はどうでしょうか。
    米国の労働人口はおおよそ1億3千万人です。H-1bビザはこのうちのほんの一握りを占めるに過ぎません。また、H-1bビザは専門職ビザですので、これを保持している外国人は、それぞれの業界で重要な地位についていますし、また、米国の経済、文化に多大な貢献をしています。企業、経済が国際化している中、米国が国際的競争力を保つためには、H-1bビザの役割が非常に重要といえます。
    今、短期的には、米国の経済および雇用が落ち込んでいますが、景気が上昇していけば、H-1bビザをサポートする企業が確実に増えていくでしょう。H-1bビザの保持者は、自分の雇用について経済状況に非常に左右されます。仕事がなくなれば、滞在資格を失うことになりかねません。発行数の制限だけではなく、米国滞在についての利便性も検討されていくことが必要だと考えます。H-1bビザ保持者が安心して仕事ができる環境が整うことを願うのは私どもだけではないでしょう。
    ■Eビザ
    Eビザのカテゴリーは、E-1とE-2に分かれます。E-1ビザは、米国との通商条約に基づき、直接アメリカとの輸出入にかかわる事業の投資家、または社員に対して与えられます。E-2ビザは、米国との通商条約に基づき、外国人または外国籍の会社が相当額の投資(相当額の投資については、前回の記事を参照)を米国にし、事業を展開していく場合、投資家、または社員に対して与えられます。E-1、E-2とも外国人または外国籍の会社が米国に投資をして設立した会社の株等のすくなくとも50%を所有する必要があります。
    例えば、日本人(複数でもよい)が50%の株を所有し、米国人が50%の株を所有すれば、Eビザの条件に該当する会社になることができます。日本人であっても永住権保持者の方は、Eビザにおいては、日本人の投資家と見られません。
    「投資」の内容ですが、会社の銀行口座への入金だけでなく、事務所の賃貸契約を交わしたり、事務所あるいは店舗または工場の工事の契約を交わしたりして、実際に事業が動いていくことを証明する必要があります。
    事業の投資家は明らかですが、「社員」という要件において、どういう社員がビザをとれるのでしょうか。大きく分けるとマネージャー級以上の社員とその事業特有の技術、技能、知識をもった社員(特殊技能者)になります。特殊技能者ですが、たとえば日本の製造業の高度に訓練された技術者が米国に派遣される場合がその典型でしょう。
    和食料理人もEビザの技能職に該当します。H-1bビザ(専門職)については、その職につく場合、すくなくとも大学卒業資格を求められますが、Eビザについては、それは必須ではありません。高校または短大を卒業した方が、その後仕事の経験を数年以上積み、高度な技能、技術を身につければ可能になります。
    また、日本の派遣元の企業の実務経験だけでなく、他の企業での実務経験もEビザ取得の条件として利用できる可能性あります。例えば、日本のA企業で日本語のソフトウェアの技術者として8年の経験あるかたが、米国のEビザ企業であるB社に日本語のソフトウェアの技術者として、A企業の経験がないにもかかわらずEビザで雇用されることが可能です。
    次に、Eビザの申請方法について説明します。
    まず、日本に居住している日本人が、Eビザを申請する場合は、東京の米国大使館か大阪の米国領事館(沖縄の方は沖縄の米国領事館)へ提出して行います。Eビザをサポートする企業から、初めてEビザを申請する場合は、通常6-8週間程度の審査期間がかかります。審査途中で米国大使館等より質問がきた場合は、さらに時間がかかることもあります。
    日本に居住している日本人が、Eビザを申請する場合は、移民局への申請を求められません。Eビザが許可され、そのスタンプがパスポートに貼られて自分のところへもどってくれば、それ以降米国への入国ができるようになり、入国の際、移民局よりI-94(国内滞在許可書)が与えられます。
    米国に別のビザで一時滞在中の方が、Eのステータスに変えたい場合(資格変更)は、移民局へ申請して行います。この場合、移民局からの許可があればそのままアメリカに滞在し、Eの仕事をしていくことが可能になります。
    しかし、一旦アメリカ国外に出国した場合は、たとえば日本人であれば、日本のアメリカ大使館等にEビザスタンプの申請をし、許可を得なければ、Eの資格でアメリカに入国することはできません。以前は、H-1b等をもっている方がEビザを申請する場合、アメリカに滞在したまま郵送で行い、取得することが可能でしたが、いまはできなくなっています。ただし、Eビザスタンプの延長の場合は、アメリカ国務省に申請書を送り取得することが可能です。
    ■L-1ビザ
    Lビザは国際企業の転勤者(外国から米国への)にあたえられるビザです。L-1AとL-1Bがあります。
    L-1Aは、マネージャーまたは、それ以上のポジションにつく場合にあたえられ、L-1Bは会社特有の知識をもった技能者、技術者に与えられます。L-1ビザの申請者(個人)は、外国にある親会社等でL-1ビザ申請時から3年をさかのぼり、1年以上フルタイムで勤務している実績が必要になります。L-1Aは最高7年、L-1Bは、最高5年の滞在が可能になります。外国の親会社にもどり1年以上勤務すると再度7年または5年の滞在が可能になっていきます。