遅くなりまして申し訳ありません。
2月の漢城かおるさんのマーケティングサロンについて藤本賢治さんにレポートしていただきました。
以下、藤本さんのレポートです。
========
~講演内容~
JTPA ボードメンバーの渡辺千賀氏が「徹子の部屋」形式で
事前に寄せられた質問に答える形で進められました。
■マーケティングの基本について
・マーケティングの呼び名、用語(Brand Management, Product Marketing, Product
Development, Outboud, Inbound)は企業によって変わってくるとのこと
・Inbound とは社内向けに次期製品の開発に責任を持ち、Sales, Marketing, Engineer
部門をつなぐ中心の役割で、Requirement(要求仕様)
のとりまとめから、製品出荷までのすべてのステージにおいて次期製品開発のプロセスをリードしていく。概ね、プロダクトマネージャーと呼ばれ、責任の度合いは会社それぞれであり、新製品の売上に責任を持つ場合もある。
・OutBound とは 消費者向け(B to C)、企業向け(B to
B)に広告の戦略を主に担当し、製品を売りだすにあたって、どういったメッセージを企業として発信していくかに責任をもち、例として、キャッチコピーのアイデア出し、Sales
資料の作成や、パッケージの設計開発、Webページのデザインなどを行う。
・ブランドマネージャという名の職種はシリコンバレーでは聞かないとのこと
■マーケティングの具体例について
・Inboud の経験の例として、コカコーラ社では戦略的に既存のイメージをいかに損なわず、今風にアレンジして広告を打つか、というチャレンジがあった。また、Parm
社では、日本への進出に際し、日本市場の調査や日本でのニーズを把握するところから、USの製品をベースにどこまで改良できるのかというチャレンジがあった。
・outboud の成功と失敗例として、以前、シリコンバレーで Pets.com という企業が
人形を使った広告で、ブランドの構築には成功したかに見えたが、後に製品がイメージについてこず最終的には廃業したということがあった。
・MS vs Appleの例から、一般的に、Appleの方が、製品としての質が高いが、提携先、販路確保、プライス戦略など、ユーザーを確保するという面で、販売力ではWindowsの方が長けているといわれる。
・上記にあげた例から、製品開発とブランディングの両者のバランスが重要であり、すべて(Sales, Marketing,
Engineer)の要素がうまく歯車がかみ合った時に、最大の効果がでる。であるから、製品開発段階から「マーケティング」という作業は始まっており、製品の出荷段階には、マーケティング/営業/サポート部門も含めて、企業全体で製品コンセプトが理解されており、準備できている段階で製品を売り出すことで、最も広告の効果が期待できる。
■ハイテクプロダクトのマーケティングについて
エンジニアがハイテク製品を消費者向けに売る際に、消費者から見て技術的に理解が難しいところを「用途」を分かりやすい形でメッセージして加えることで、マーケティングを行ってきた。当時はプレーヤーが少なかったので時代的にもトランスファーが可能で運が良かったとのこと。また、基本的に、シリコンバレーではブランド調査などにはお金をかけず、Web広告に対して、アクセス内容を調べる程度。広告にかけるお金があるのであれば、どちらかというとお金を製品開発に回すことが多い。
■知名度のない会社が製品を売り出す場合について
基本的に予算がないので、地道にコツコツやっていくしかない。例としてはSNS、Twitterを使ったり、ページビューのあるブロガーに製品レビューをお願いしたりすることで、徐々に広げていく。できれば少しお金をかけて、Googleのキーワードを購入したり、他の大企業について、製品発表会に出展するという方法もある。
アーリーアダプターに浸透した後、メインストリームへ移る際(キャズムを越える際)は、戦略を転換してはならない。初期のミッションステートメント、信念、コアメッセージは変えずに、エクステンデットメンバー向けにメッセージを作ることが重要。
■マーケティングの失敗例について
消費者に対して、明確なメッセージが伝わってこない場合。例として、Microsoft の”I’m PC”というCM。また製品を売り出すにあたって、会社の各部署が足並みがそろってない場合も失敗する。
■サブブランディングについて
サブブランディングといって、ブランディングにもレベルがあり、会社、プロダクトライン、製品レベルでのブランドを展開する必要がある。例として(会社)Apple、(プロダクトライン)Mac、iPod、(製品)Nano、Shaffleなど。Panasonicは、PCメーカのイメージはなかったが、Intelのイメージを前面に出して(“Intel入ってる”)、PCメーカとしてのブランドイメージを確立していった。
■商標権について
Web時代であることからも、当初から世界展開を考えたブランディングをすべき。社名、製品名はどこの国でも通用するものにすべきであるし、これからの時代はドメインもお金をかけてでも取得しておくべきである。
■ローカリゼーションについて
コアイメージを変えずに、現地で受け入れられるものにするのが難しい。
また、消費財メーカーではブランドを海外展開する際、国ごとにマーケティングを決めるか、世界全体で同じもの統一するか、どちらの戦略をとるかはいまだに行ったり来たりしている。
■マーケティングの効果測定について
TV広告から、統計の取れるWeb広告にシフトしつつあるが、結局、数字だけでは計りきれないArt的な部分が残っていくだろう。例として、エモーショナルバリューといって、洗剤等の日用品は、親が使っていたのでなんとなく使い続けているということがある。また、数字は測定方法を変えれば操作できてしまうものなので、使い方次第である。
■日本とアメリカの違いについて
文化の違いもあり、コンペティターに対して、ネガティブキャンペーンを打つことがあるが、最近はあまり効果が見られなくなってきている。それよりも自社製品の良いところを打ち出していった方が長期的に見ても効果が高い。
■スタートアップのブランディングについて
まずは、良い製品を作ること。会社が大きくなっていく過程でも最初のミッションステートメントをしっかりと共有し、それが企業文化になり、ブランド力につながっていくと信じている。
■お勧めの本
David Aaker著”Building Strong Brand”
~感想~
ブランディング・広告の世界とはいままで、まったく縁がなく、基本的な用語から、ハイテク製品でのマーケティングの違い、ローカライズするにあたってのお話など、全ての話が新鮮であった。イイ製品を作っても売れなければ会社としては成り立たないし、たくさんの人に製品知ってもらったとしても、製品に魅力がなければ会社としては長く続かないというジレンマの中で、企業が存続していくために、いかにバランス良くやっていくかというサジ加減を少し学ぶことができたかなと充実感を胸に会場を後にしました。
コメントは停止中です。