大学の英語教育で学べなかったのは、「使ってはいけない英語表現」です。何気なく言った一言が、米国人をびっくりさせてしまったり、自分の使いたい意味の全く反対に受け取られてしまったことがあります。JTPAニュースレター編集部では、「タブー英語」と題して座談会を開きました。議論は米国の社会ではタブーとなっている文化背景にまで拡がりました。ご意見やご感想を是非newsletter@jtpa.orgまでお送りください。
■「Profanity」ルール?
Profanityとは、冒涜的な言葉や表現のことを指します。CursingまたはBad Wordsと言われることもある。基本的には禁句なので、使うときはよほど状況をわきまえないといけないだろう。
あえて原則をあげるなら、1)大勢の前で使わない。2)知らない人の前で使わない。3)公共の場で使わない。差別的なBad Wordsでなければ、法的な制限は無いが、他人の私有地内でこの言葉を使えば、追い出されたり、警備員を呼ばれてしまうこともありえる。日本の放送禁止用語同様、公共電波でProfanityを使うことは禁止されており、使った場合は罰金が科せられるらしい。。
しかし、Profanityを全く使わない会話というもの非常に不自然。友人同士で集まってふざあっている時、自分だけがProfanityを使っていなかっため、みんなにモラルに厳しい宗教にでも入っているかと勘違いされたことも。
■「F」Word
米国暮らしに慣れてきた外国人の中に、やたら「F」Wordを連発するのがアメリカ人らしい言葉遣いだと勘違いしている人も多い。そういう人と外で会話をしていると、その言葉の汚さに驚いた周りの人が眉間に皺を寄せていることに気がつく。やはり「F」Wordを使うのは相当気心の知れた友人との会話や、本気の喧嘩で威嚇効果を高めるぐらいに限るべき。
「駄目になった」と言うときに、Fxxked upは最悪の状態、Screwed upはそれより被害の少ない状態を示すという使い分けが可能だが、ScrewはFxxckと基本的には同義なので、どっちにせよ、公的な場では使うのには適さない表現。(I blew itという言い方もあるが、これはこれで問題あり)
■宗教関係
「Damn」も本来は宗教用語で「神により地獄に落とされる」という意味なので、あまり乱発してよい英語ではない。気にする人は、God→Gosh、Damn→Dang、Hell→Heckと言い換えている。
基本的に宗教の話はタブー。よほど親しい間柄か、あくまでもアカデミックな話をしている、と双方が理解していない限り、あまり他人の宗教について質問しないこと。宗教の自由は憲法で保障されているいるので、他人の宗教を非難したと見なされれば、裁判沙汰になることもある。自分の宗教を主張するのは認められているが、それが行き過ぎて聖書の一句をe-mailの末尾に引用したり、車に魚のステッカー(キリスト教のシンボル)を貼るようなタイプもいる。
宗教が理由で牛肉が食べれない、豚肉が食べれない、という人もいる。そういう人と昼食をとる時は自分のオーダーするものについて非常に気を遣ってしまう。敬虔な回教徒で、会議中だろうとどこだろうと時間になると床に座って必ずお祈りを忘れないという人もいて驚いた。自分の宗教が理由で休暇を取る人種も多いが、日本では見ない風景だろう。様々な違う宗教を持った人たちが集まっているので、彼らの文化を受け入れなくてはいけないというのもこの地域の性格か。
■性別・性的嗜好について
会社の女性が、床に置いてある文書の束を机に持ち上げようとしていたので、レディーファースト、と思って助けようとしたら、逆に「何で他の社員が誰でもやっていることを私が自分でやっちゃいけないの?私が女性だからこれくらいのモノでも重くて持てないとでも思っているの?」と絡まれたことがある。これは極端な例だけれど、性別の違いを強調するようなことを言うのはあまり好ましくない。例えば、「女性は感情的になりやすい」など。
また、気をつけなければいけないのがセクシュアル・ハラスメントとみなされるような行為。セクハラについてはそれだけで大きなトピックなので、ここでは深入りはしないが、日本では平気で口にでる「スタイル良いね」という誉め言葉も同性、異性ともセクハラになってしまうこともある。とにかく相手の身体的特徴について語るのは出来るだけ避けるのが一番。
同性愛がらみの差別的表現やジョークも危険。特にサンフランシスコベイエリアで働く場合は、会社の上司・同僚、そして仕事相手の中に必ず同性愛者がいると思っていた方が良い。何気なく映画やTVで聞いた同性愛者についてのジョークを使ったところ、差別的発言と受け取れられ、大きなトラブルに巻き込まれるのはよく聞く話。
ある会社で、聖書中の同性愛者を弾劾する一節を自分のキュービクルに貼っていた人がそれを理由にクビにされ、宗教の自由をタテにクレームをつけたところ、宗教の自由を理由に、人権損害をすることは認められない、と言われたそうである。どちらも合衆国憲法で保証されている自由だが、「人権」のほうが優先するようだ。
ただ、同性愛に関しては、住んでいる州、コミュニティによって同じアメリカでもだいぶ人々の態度が違うので、上のような事例を一般論とすることは難しい。
■名前を呼ぶ
米国はどんな目上の人相手でもファーストネームの呼び捨てが許される、とされているが、人によっては不愉快だと思う人もいる。また、西海岸では初対面からファーストネーム呼び捨てが横行しているが、他地域では必ずしもそうでない。
ビジネスシーンでは、社内の人はいきなりファーストネームで呼んでも大丈夫なことが多いが、社外の人に対しては最初はMr/Ms/Drなどの「尊称(prefix)つき」で呼びかけ、本人がファーストネームで呼んでくれ、と言うまで待つのが良い。医者さんや博士号を持っている人は性別を問わずDr.を使えば間違いない。
Ms(「ミズ」)は女性一般に使えるので、相手が結婚をしているかしていないか分からないとき用いる。仕事の場で知り合う女性に関しては、結婚してることがわかっていても相手がMrsをつけろといわない限りMsを使った方が安全。
フォーマルな呼びかけでMrs.を使う時は、たとえばJohn Smithさんの奥さんだったら、Mrs. John Smithになり、本人の名前は出てこないという、驚くべき男性上位ルールがあるので要注意。なので、結婚しても別姓の人に対して、Mrs. (旧姓)と呼びかけるのは間違い。
アメリカ人の子供が自分の事をファーストネームで呼び捨にするのは不愉快だ、と思う場合は子供本人に対し、MrやMs、Mrsをつけてほしいと申し入れるべき。
■年齢を聞く
一般的に、年齢を聞くことはタブーとされる。特に、採用面接で年齢を聞くことは法律で禁じられているので要注意。
年功序列という概念が無いため、上司の方が部下より若い、などということは日常茶飯事だが、だからと言って年上の人に経緯を払わない、というわけではない。また、年上の人も年齢が上だからというだけで偉ぶることはせず、日本のように年齢が下だということがばれた瞬間に相手の態度が急変する、ということもない。
■ジェスチャー
中指を突き立てる仕草はもちろんタブーである。公共のTVでは指にモザイクさえかかってしまう。日本人が中指でモノを指さしていることがあるが、見ていて気が気でない。
肘の内側をもう片方の手のひらでつかんで、肘をまげて拳骨をつくって上に突き出すのも同じ意味。無意識にストレッチでやってしまいそうなポーズなので、要注意。
■危ない日本語
「おしい!」や「おいしい!」と思わず出てしまった日本語が「Oh Sxxt!」と聞き取られてしまい、不愉快そうな顔をされたことがある。「駄目!」も「Damn it!」に聞こえるので危ない。
■直訳英語
あまりに部屋が暑いので、「I’m hot.」と言ったら、みんなが驚いてしまった。「私はセクシー」と自分から言ったことになるのだから。また、「hot」には「発情している」というニュアンスもある。
■似ている単語で間違い
「Naturalist(自然公園などにいる博物学者)」に会った話をしようとして、「Naturist」に会ったと言ってしまった。Naturistとはヌーディストのこと。
レーザーによる目の手術で視力を上げた友人の話を聞いて、目が悪い私も是非「Eye Surgery」を受けたいと言おうとして、「Eye Injury」を受けたいと言ってしまった。「Surgery(手術)」と「Injury(怪我)」では全く逆の意味になってしまう。
また、英語の授業で、「precipitation(降雨)」のつもりで、「prostitution(売春)」と言った人もいる。
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