「シリコンバレーで働く:日本からの社内移籍によるキャリアプランの構築と成功のための留意点」に出席いただいた参加者の中から、実際に日本から移籍してきた方々を対象として、アンケートを行いました。移籍しようと思った動機や、移籍後の感想、シリコンバレーで働くにつき重要な点等を記入していただきました。


■ 「アンケートサマリー」
アンケートに答えていただいたのは、参加者70名のうち16名の方で、プロフィールとしては:
エンジニア7人、マーケティング4名、研究者2名、その他3名
 日本、アメリカ合わせて10年以上働いている方10名、そのうち20年以上5名、
 日本、アメリカ以外でも働いている方2名
 日本企業勤務でアメリカ駐在を希望して来た方 2
となっています。16名の声ですので、キーワードが消えないように、なるべく全員の分を取り上げます。

  1. 移籍しようと思ったきっかけ
    • 外部からの働きかけがあった方 6名
      • 理由は、日本側からの働きかけ、US側からの誘い、日本側の規模縮小 等。
    • 自分で希望されてきた方 7名
      • 理由は、単にアメリカで働きたかった、仕事の内容、技術の最先端を求めて 等。
    • 上記以外の方は無記名
  2. 移籍時点でのキャリア・イメージ
    • 数年で日本に帰る。
    • 専門性を高める。
    • いずれ自分でビジネスを起こす。
    • ワールドワイドの人脈をつくる。
    • 色々なビジネスモデルを見る。
    • 世界に通用する多様性をもつ。
  3. 実際に移籍してみての感想
    • 良かったこと
      • 働きやすい。
      • ストレスが減った。
      • 収入が増えた
      • シリコンバレーブランドで仕事のチャンスが多くなった。
      • 仕事の質、スピードが上がった。
      • 自分の仕事に自身がついた。
      • 英語ができなくてもなんとかなる。
      • 周りがとても楽しく明るく働いている。
    • 悪いこと(?)
      • 日本からの頼まれごとが多くて大変。
      • 厳しい環境である。
      • 妻が退屈してるので大変。
      • 子供の学校が大変。
      • 雇用が不安定で、将来が不安。
      • 言葉の壁、プライベートで友達が増えない。
    • それ以外
      • 日本のときとあまり差は感じない。
      • プロジェクト実行中止の決断が早い。
  4. シリコンバレーで働いていく、生活していく上で重要な点。
    • 仕事、情報のスピード。
    • ネットワーク、人付き合い。
    • 言い訳スキル、理由付け、論理性。
    • 実績。
    • 仕事と生活のバランス。
    • 常に新しい事へのチャレンジ。
    • 孤独に耐えられる忍耐。
  5. 社内移籍についてのよしあし
    • 人脈、仕事の連続性があってよい。
    • 今までの実績への評価があってよい。
    • 日本への自分の影響力が上がるのでよい。
    • 当然と思われて評価が厳しい。

以上で、アンケートサマリーは終了です。皆様の文面からは、外部からの働きかけでこられた方々も、自ら望んできた方々と変わらず、積極的に環境の変化を捉えて、充実した仕事をされていると感じました。サマリーをしていると、自分の過去を見直し、これからのキャリアを考える良いきっかけとなった思いです。皆様にも、なにか気づかれる点はありましたでしょうか?アンケートに答えていただいた皆様、大変ありがとうございました。
■ 「イベント後の e-mail」
JTPA4月イベントに参加していただいた、以前からの知人である山下さんからイベントの後にメールをいただきました。このイベントにも深く関わる事柄であると思い、アンケートサマリーと併せて、ここに紹介したいと思います。


(前略)
こちらに来てから思うのですが、やはり社内外の人脈が景気の良し悪しに関係なくいかに大切かを実感しています。昨年これに関連したことを 日経のWeb Siteに投稿しました。下記はお恥ずかしいのですが、ご参考までに。
(中略)
シリコンバレーでのリストラ事情
アジレントテクノロジー勤務
山下 慎一氏
当地、シリコンバレーでもリストラがはやり、MBAを修得した人でも、仕事探しが大変だったり、リストラされる人が増えてきました。下記は私が日ごろから色々なシニアな人たちから聞いた、こちら流のリストラ防止策です。
 スタンフォードを始め多くの著名ビジネススクールの応募者が急増していますが、よいところのMBAを取れば、よい仕事が見つかるという時代は終わったのかもしれません。日ごろからの泥臭い人脈作りが非常に大切ですし、スタンフォード ビジネススクールでもこれは教えないでしょう。

  1. 就業時間の最低3割は自分をVisible(つまり売りこむ)することに使え。仕事がら今は何人もの人からレジュメ(履歴書)を渡され、仕事口探しを頼まれます。不思議なことにほとんどの人はレジュメを預けっ放しで、自分から面会を求め、売り込みに来る人はあまりいません。社内でポストがあっても自分が自信をもって紹介できる人でなければ、親身になって助ける気にはなれません。社内外の営業は非常に大切です。
  2. もし自分のポジションまたはグループが危なくなりそうであれば、すぐにコンタクトできる100人の社内外人脈を作れ。 100人のそのように親しい人脈を作ることは簡単ではありません。しかしながら、そのような人たちに常に自分のバリューを日ごろから売り込めということでしょう。
  3. レジュメはいつもUpdateせよ。自分のレジュメは商品です。できるだけ最適の力強い言葉を選び、レジュメをUpdateしろということです。
  4. 常に自分のメンターやシニアーな人たちに自分が何をやりたいのか、何をできるのか、自分がどのような貢献(Contribution)ができるのかを売りこむ必要があります。

私は上記を少なくとも5人以上の人たちから聞き、日本人でも米国人に負けず、当地で生き抜く努力をしています。上記は良く考えれば、当たり前のことで日本でも実践可能またはやるべきではないでしょうか。日ごろからのシニアな人たちへの売り込みは非常に大切です。良い学校のMBAを修得してもあまり成功していない人たちは、日ごろから上記のような泥臭いことをあまりやっていないからだと存じます。
(以上)


ええっ!? 当たり前ですか? いやー、これができれば、素晴らしいことだと思いました。3割という具体的な数字がでているところがわかり易いですね。私自身は、レジュメだけはUpdateしていますが、なかなか、その力強い言葉が見つからなくていつも苦労します。常に自分をVisibleにするというのは、自分の人脈つくりのためはもちろんのこと、日ごろの仕事でも超重要事項ですよね。仕事の質、スピードを上げる、やり直しをなくす、チームを効果的に動かすなど、常に自分をVisibleにする事で、かなりの効果を上げられると感じています。
さて、山下さん自身もシカゴでMBAを取得されているのですが、スタンフォードビジネススクールの卒業生の話によると、スタンフォードでは、人脈つくりに関する授業が存在するそうです。Organizational Behaviorという組織での人間関係学と呼べるような独立した科目で、例えばオフィスの席は、なるべくWater Coolerとか、休憩室・キッチンなどの人の集まるところの近くにして、通りかかる人と知り合いになろうといったような笑えるノウハウを色々と教えてくれるのだそうです。
人脈つくりは、生まれ育った環境で得手、不得手があるとは思いますが、日ごろからの人の付き合いというものが大切であるというは疑いのないところでょう。また、どのような場所でかけるか、どのような環境に身をおくかという自分自身の選択は、どのような人脈をつくりたいのかにおいて大事なことであると思います。
それでは、この辺で。
By 松宮 博