4月11日金曜日午後7時、俣野努氏セミナー開催レポート
MAZDAが世界に誇る「Miata」のデザイナーの俣野氏。元々、日本の大学で工学部に在籍していものの、車のデザインをしたい一心でロサンゼルスにあるカーデザイン界トップの「Art Center College of Design」で学位を修得。現在、サンフランシスコの「Academy of Art University」のIndustrial Design Departmentのトップとして、後進のインダストリアル・デザイナーの育成にあたっておられます。
今回のセミナーは、右手と左手の組み方によって、左脳派、右脳派の人間に分ける事ができるという実験から始まり、話は俣野氏の経歴、そして彼のデザインスタンスの話へと移りました。下記では俣野氏のデザイン理念と実践方法を中心に紹介していきます。
●中身から生むデザイン
表面的なデザインは一時的にはもてはやされるが、長期的に見た場合、消費されてしまうデザインとなってしまう。その点、その車のエンジンなどの機能を含めた性質から考えられた「中身から生むデザイン」は何年経っても人の目を引付ける事のできるものになる。これは、無理のないコンセプト立てができることにより、量産されるまでのコンセプトにぶれが少なくなるからである。例えば、フロントが極端に尖っているスポーツカーのデザインは一見良く見えてしまうが、フロントが極端尖っていることによって、リアからフロントへの線を引いた時の軸が下へと向いてしまい、車が急ブレーキをかけているようなイメージを消費者に与える事となり、時間が経った時に、飽きられてしまうと考えられる。実例として、Miataは運動性の高い車として、この中身からデザインという手法をとっているため、スポーツカーとして長期的に愛される車となっている。他の例をとして、「筋肉質な車」としてデザインされたRX-7は、後の消費者アンケートの結果、体を鍛えるのが趣味というオーナーが7割を占めていた。
●環境から生まれるデザイン。
センターコンソールにあるエアコンスイッチ、オーディオの位置は各国によって違う。これによりどこの国の車かを知る事が出来る。また、この違いは各国のスイッチのニーズの違いによって発生するもので、環境から発生しているデザインだと言える。また、アメリカの車と日本車の違いの例に、生まれ育った国の駐車場の大きさ、道路の広さなどの環境距離感によって、各国のデザイナーはそれぞれの感覚をもってデザインしているといえる。実例として、日本では駐車はバックから入れることが多いが、米国は駐車場自体が広いため、車は全くの逆で頭から入れられる。よって、アメリカ市場に向けてデザインされていたMiataの場合、停車中の車を見る歩行者から注目されるのは車のリア・フェイスとなるり、また、運転中に関しても後ろの運転者から見えるのは、同じくリア・フェイスであり、リア・フェイスにこだわった車にしている。更に、Miataのインテリアの基本色であるベージュを例にとっても、アメリカデザインチームがイメージする色と、日本チームのイメージする色では異なってた。
●俣野氏のデザインスタンス実践方法
俣野氏は彼のデザインスタンス実践方法の一つとして、自分がそのモノになって考えるという方法を紹介。例えば、電気のスイッチ。汚い手で触って欲しくなかったら、汚れにくい材を使う。乱暴に扱って欲しくなかったら、切り替え部分をスムーズになど、自分自らをそのモノ置き換える事で内側からデザインを生む事が可能となる。
講演終了後、懇親会へと移り興奮冷めやまぬ参加者に囲まれ、質問攻めにあうも一つ一つの質問に丁寧に答える俣野氏。参加者一同、普段とは違う分野から、しかも、世界のトップを走るデザイナーから直に話を聞く事ができた、とても意義有る時間となったのではないかと思います。
*会場に来られなかった方のために、セミナーの様子をUstreamで見る事ができるようになりました。ご興味のある方は以下のURLからご覧ください。http://www.ustream.tv/channel/jtpa-geek-salon
(開催レポート by Sunny Tsang)
————— 以下はセミナーの告知文です ——–


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JTPA 4月セミナー
「俣野努氏講演 〜 もの造りと私」
4月11日金曜日午後7時
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MAZDAが世界に誇るオープン・スポーツ『Miata』(日本名『ユーノス・ロードスター』)のデザイナーで、現在サンフランシスコ「Academy
of Art University」のIndustrial Design
Departmentのトップとして、後進のインダストリアル・デザイナの育成にあたっておられる俣野氏をお招きし、セミナーを開催します。
俣野氏の40年にわたる海外生活の経験から得た文化、生活習慣の違い、そうした文化や歴史を踏まえた「もの造りのプロセス」とは?その結果として生まれる製品の違い、顧客の感度の違い、こういった知識経験を次世代につないでゆくための工夫とは?俣野氏のトークをお楽しみに!
スピーカー: 俣野努/Tom Matano (またの つとむ)
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Executive Director,
School of Industrial Design, at Academy of Art University, San Francisco
Matano has thirty years of experience in the automotive design
industry. Prior to joining the faculty at the Academy of Art
University, he held design positions at General Motors Design in
Michigan, GM Holden’s in Australia, and BMW in Germany. In 1983, he
became a Chief Designer at Mazda North America. He continued to become
Vice President of the Design Division, Executive Vice President of
Western Operations for Mazda R&D North America, and Executive Designer
& Director of Mazda North American Operations. From 1999 to 2002,
Matano worked with Mazda Headquarters in Japan, as an Executive
Designer in the Global Advance Studio and the General Manager of Mazda
Design. Matano managed the Chief Designers group that creates the
entire Mazda car line designs, as well as the European and North
American studios. His accomplishments at Mazda include the MPV, MX 5,
RX 7, Miata “M-Coupe” concept car, Miata “M-Speedster” concept car and
many other projects by the design teams he managed and created. Mr.
Matano is committed to becoming an educator, and using his diverse
knowledge and experience to enhance the Industrial Design program at
the Academy of Art University in San Francisco, since 2002.
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<*****Beta版*****> 会場に来られない方のために、講義の様子をUstreamでライブキャストします。ご興味のある方は当日以下のURLからご覧ください。 http://www.ustream.tv/channel/jtpa-geek-salon --------------------------------------------------------------------------- 日時:4月11日金曜日午後7時 場所: Wilson Sonsini Goodrich & Rosati    950 Page Mill Road, Terrace 2C     (メインエントランスがあるビルの280側の隣、レンガの建物の2階です。)     Palo Alto, California 94304-1050 進行: 19:00 開場、ネットワーキング 19:30−20:30 講義 20:30 Q&A、懇親会 食事:軽食が提供されます。 参加費用:賛助会員 10ドル、一般 15ドル 今回のセミナー開催レポートを書いてくださる方1名を募集しています。希望の方はseminar@jtpa.org宛てに「参加レポート」と記載してお知らせください。原稿料として参加費を無料にいたします。(先着1名様のみ。) 賛助会員につきましては、当日45ドルの寄付金を持参してご登録いただければ、その日のセミナーから10ドルになります。賛助会員についての詳しい情報は、こちらのリンクをご覧ください。https://www.jtpa.org/about/donation/ 応募方法: Facebookアカウントをお持ちの方は、以下のURLよりイベント参加を申し込んでください。その際Wallに「俣野氏に聞いてみたいこと、話したいこと」を1−2行簡単に記載ください。http://www.facebook.com/event.php?eid=9752646543 メールでお申し込みを希望される方は、seminar@jtpa.org宛てに 「俣野セミナー参加希望」のsubjectでお申し込み下さい。なお、セミナーで「聞いてみたいこと」「話したいこと」を1−2行簡単に記載ください。 頂いた情報は当日プリントアウトして参加者の方に配りますので、自己紹介も兼ねてご記入ください。 _______________________________________________ 皆様のご意見・ご感想はこちらのJTPA公式フォーラムまで: http://www.lingr.com/room/jtpa JTPA ホームページ: https://www.jtpa.org