JTPAニュースレター編集部では、これから「私の一日」と題して、シリーズでシリコンバレー人の日常生活を描いていくことにしました。シリコンバレーに関する様々な情報は日本でも溢れていますが、「そこの暮らす日本人の普段の生活」についての 情報はあまり見つからないのが事実です。このシリーズが最終的にシリコンバレーの日本人達の暮らしをイメージしてもらえるようなコラムになることを望んでいます。
第一回目として、航空宇宙工学科の博士課程在学中の樋口聖さんの一日を書いてもらいました。「博士課程在学中」と聞くだけでまるで研究室と図書館の行き来をしているだけのようなイメージがありますが、実際はどうでしょうか?
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7/2(金)の一日
8:00
起床
体重を量ってグラフへ記入。一日2回(朝夕)計測して歩数も数えます。朝食はシリアル、トーストがメイン。たまに時間があるときはマフィンを焼いたりなど。本日は趣向を変えて, 最近研究を重ねている牛丼です。
8:45
雑誌(Aviation Week,, Economist)、授業のCourseNoteに目を通す。朝の時間(理想としてはもっと早く起きたいのですが)を本・雑誌を読んだり, 簡単に授業の予習をします。普通の学期(秋, 冬, 春)だと授業の数が増えるので宿題をやったりなど。
Course Note: http://www.stanford.edu/class/ee261/reader_summer04.pdf
10:30
研究室(HEPL: Hansen Experimental Physics Laboratory)へ出勤(徒歩25分)。
http://www.stanford.edu/group/hepl/
今日は実験装置を組み立てます(基本的には電子工作+金属加工)。現在は宇宙機に登載するセンサーを様々な外乱的な熱源(太陽の放射熱・電子機器類の自己発熱など)から保護するための熱制御システムを研究しています。普段は熱伝導モデルを数値解析することが主なのですが, 最終的なゴールは宇宙機に載せられる”もの(制御機器+ヒートポンプ(TEC:Th-ermal Electric Cooler))”を探索するのが目的なので, 理論が正しいかどうかを実際に試してみることも行ないます。
非アメリカ人がNASA, Boeingなどの航空宇宙産業で職を得ることは不可能に近いので,現在行なっている熱(温度)制御の研究はいろいろな分野に応用が効かせられると思います。研究活動のネタとしてだけでなく, できれば卒業するまでに実際のIndustoryで応用できる方法もいくつか考えておきたいですね。
日本の学校と大きく違うのは, 時間の拘束がないということ(RA: Research
Assitantshipの規定では1週間に20時間働くとありますが)。仕事をして結果を出していればとくに問題がありません(同じLab.の友人では全く顔を出さず家で働くといった例もあります)。RAという制度は日本の教育システムと大きく違う点で, 授業料を100%カバーしてもらえる上に毎月生活に困らない程度の給料がもらえます。上手くやりくりすると, かなりの額の貯金をすることも可能です。夏は普段の2倍出してもらえるのでしっかり働かないといけません。
通学は徒歩です。たまに自転車も乗りますが、(とくに自分は太りやすいので)能動的に運動をしないと指数関数的に太ってしまいます。
13:00 – 14:30 授業(途中5分間の休憩)
EE261 Fourier Transform and its Applications
Course Web Site: http://eeclass.stanford.edu/ee261/
日本の院生と違うのは、授業をたくさんとる必要があるということです。とくにPh.D.になると研究だけというイメージが強い場合がありますが、あと2年は授業の単位もとりつづける必要があります(Aero/AstroのM.S.であれば研究をする必要はなく授業をとるだけで最短9ヶ月で取得できます)。ここの授業はとても興味深いものが多々あり、労力を注ぐ分得られるものが大きいです。学期の始めは,”あれもとりたい, これもとりたい”と悩ましい選択を迫られること
もしばしば。
授業のレベルとしては, 日本の大学で普通に勉強したことのある人なら問題無くついていけると思います。大きく違うのは, 教授の教え方(難しいことを分かりやすく説明できる能力), 学生達のレベルの高さでしょう。加えて, 宿題をほぼ毎週課すことで徹底的に理解させる点でしょうか。日本では半年に1度, しかも提出しても返してもらえないのがほとんどでした。
特に授業の進め方が上手な教授:
Prof. Kroo(AA) http://aero.stanford.edu/People/kroo.html
Prof. Boyd(EE) http://www.stanford.edu/~boyd/
14:30
Lunchをとり忘れたのでサインドイッチ($4.50)を買う。
Lunchはキャンパス内でとることがほとんどです。たまに自宅に戻って簡単なパスタをにつくったりなどします。外食産業は日本の圧倒的優位ですね。
14:45
研究室へ戻って実験装置組み立て再開。
18:00
帰宅後、Dishへジョギング。およそ5マイルを疲れない程度に走ります。Dishでは(6月のNews Letterで触れられていましたが)Mountain Lionという兇暴な動物がいるそうです。
http://www.stanfordalumni.org/birdsite/pix/maps/map_Dish.html
19:30
軽く食事会を開くためAndronicosへ買い物。本日はNew York Steak。料理は右脳をよくつかうため(勉強/研究とは異なる領域)気分転換にもいいです。ここでは下手に外食するよりも作ったほうが美味しいですし, 食材の種類も抱負で概して低価格と言えます。
22:30
(食事会終了後)宿題が出されたのでそれぞれ問題の見通しを立てる。EEの宿題は長いのが特長。今週は独立記念日ということで短めです。
http://www.stanford.edu/class/ee261/261homework.pdf (11,14-18)
宿題の量は授業によって大きく異なりますが、1回分(1週間)でLetter用紙に10~15ページ程度。
例えば, 春学期にとった授業(Introduction to Multidiscipinary Design Op-timization)だと50ページ以上(C言語のコードをプリントしたので膨大), 2週間以上かかることもあります。これはほぼFinal Project並みかそれ以上の量でした。
23:00
家計簿をつける。自称ユビキタス家計簿を渡米直後にPHP+PostgreSQL+Apacheで作成しました。インターネットにつなげられれば世界中どこでも家計簿をつけられるということと、特別なクライアント用ソフトが要らない, プラットホームに依存しないというのがメリットです(個人データがあるため非公開, 2005年に撤去)。
オンキャンパスのネットワークサービスでは, 固定グローバルIPアドレスを1個配布+ユニークなホスト名を設定してもらえます。月$10(+Wireless Lanサービスも利用可能)。自宅にDNS, WWW, メール, FTPなどの各種サーバを設置することもできます。とくにPC Unix好きな人にはたまらない環境でしょう。ちなみにStanfordでは、SU Linuxというものを配布しています。
http://linux.stanford.edu/
0:00
SJA(Stanford Japanese Association)という団体のwebmasterをしているのでページの更新作業を再開。最近は情報発進のために作るというよりも, Web Design技術を学ぶことが主目的になりがちです。
http://sja.stanford.edu/
1:00 – 就寝
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